イライラの矛先を、間違えない。子どもや部下に当たってしまう時の処方箋|参謀医Reimy

メンタル

朝の支度、うまくいかない日がある。

「早くして!」「もう時間ないよ!」

子どもに向かって声を荒げながら、ふと気づく。私が早く起こさなかったから。朝ごはんの準備にまごついたな。そういえば昨晩子どもを早く寝かせてあげられなかった。

子どもが遅いんじゃない。私が、準備できていなかった。

急いでいる時に限って、子どもはゆっくり動く。急かすと余計スローになる。そんな経験、あるんじゃないかな。

今日はそのイライラの話をしよう。矛先を間違えないために。

イライラが起きやすい、本当の理由

精神科の外来で、こういう方をよく見てきた。

「自分の思い描いていた道に、他の人が乗ってこないとイライラする」という方だ。

部下が自分の指示通りに動かず、もたついて見える。子どもが自分の言うように動かない。義母が自分の言うことを理解せず、すぐ自分の話にすり替えてしまう。

共通しているのは、「こうあるべき」という自分の地図と、現実のズレだ。

イライラは「期待と現実のギャップ」から生まれる。相手が悪いのではなく、自分の中の「こうあるはず」が強すぎるとき、小さなズレが大きな怒りに変わりやすい。

これは弱さでも性格の問題でもない。真剣に物事を考えている人ほど、理想と現実のギャップに敏感になる。精神科医として、そう感じてきた。

その怒りは、本当に相手に向けられるべきもの?「主語の置き換え」を試してみて

イライラは正直だ。

子どもが片付けない、とイライラする。夫が家事をしてくれない、とイライラする。部下が頼んだ資料を作っていない、とイライラする。

一度、一瞬だけ、その文章の主語を「私」に置き換えて原因を考えてみてほしい。

「子どもが片付けない」→「私が物を与えすぎた」「私が片付けやすい環境をつくっていない」「私が片付ける姿を見せていない」

「夫が家事してくれない」→「私が上手く家事分担できていない」「私が夫の得意な家事を知らない」「夫がどの程度疲れて帰ってきたか知らない」

「部下が頼んだ仕事をしていない」→「私が進行状況を把握しきれていない」「私が部下の能力を正しく評価できていなかった」「私が部下に頼んだきり放置していた」

……とまぁ、こんな感じに。

とても苦しくなる。でも、そこに何かヒントが隠れていることがある。

ここで注意!主語を自分に置き換えたままにしてしまうと、「自分が○○しないからダメなんだ」といずれ自責の念が強まる。それは自分の心にダメージを与えてしまうから、一瞬だけ置き換え、カッとなった頭を冷やすというのがポイントだ。

「イライラしているって事は、きっと何か自分にあったはず!なんだっけ?」と考えよう。相手だけが原因じゃないことが、意外と多い。

攻撃の先に解決はない

攻撃しても、何も解決しない。

声を荒げても、怒鳴っても、物事はうまく進まない。子どもの支度は速くならないし、夫の家事スピードは速まらないし、部下は慌てて集中できず仕事は進まない。自分の気持ちもすっきりしない。

むしろ、その場の空気が重くなって、みんなが萎縮して、さらに物事が進まなくなる。

攻撃は、エネルギーの無駄遣いだ。

当たってしまった後の、正しい謝り方

それでも、当たってしまうことはある。人間だから。

わが子に当たってしまった時は、素直に「ごめんね、ママちょっとぷんぷんしちゃってたかな?なんでだろう?」と言うようにしている。するとわが子が「〜だからじゃない?」と言ってくれて、相互理解になることがある。子どもは思っているより、ちゃんと見ている。

部下に少し強めに言ってしまった時は、「ちょっと最近〜が大変でイライラしがちかもしれません、強く言ってしまってすみません」と伝えるようにしている。

謝る時のポイントは、言い訳より先に「ごめんなさい」を言うこと。そして自分のコンディションが悪かったことを素直に認めること。それだけで、相手の受け取り方がぐっと変わる。

意図せず誰かを傷つけてしまったとき、一番しんどいのは、実は自分自身だったりする。「またやってしまった」と思ったとき、自分を責めすぎなくていい。ただ、少しだけ立ち止まって謝ること。それだけでいい。

精神科医直伝、イライラメモと「神や仏ならなんて言うか」という問い

外来でイライラが抑えられない患者さんに行うのが、認知行動療法だ。本格的にがっつりやるのも良いけれど、忙しい日常生活に取り入れるなら、簡単で手軽にでき習慣化できるくらいがいい。

そのやり方が「イライラメモ」だ。手帳やカレンダーに、以下をざっと記すだけでいい。

・イライラ○点(100点満点)
・状況
・どう思ったか
・そう考えた理由
・違う見方(もし友人や家族だったら、その考えになんてアドバイスするだろう?)

実際の例を挙げよう。

例①
イライラ80点 / 朝家を出る時に子どもがゆっくり支度をする / 遅刻したくないから早くしてほしい / その時間込みで早めにさせればいいんじゃない?

例②
イライラ60点 / 電車が混雑 / ゆとりがなく苦しい / 少し空いている車両や時間を確認してみたら?

例③
イライラ90点 / 頼んでいた仕事を部下がやっていない / 普段から遅刻欠席も多い、指示通りやらず謝らない / 体調が悪いのか?指示の仕方がわかりづらかったか?

どうしても時間がなく、めちゃくちゃ忙しくてメモもすぐにできない場合は、これを頭の中で一瞬考える。

「イライラ○点、神や仏ならこの状況になんて言うだろうか」

そう考えるだけでいい。ちなみにこれはイライラ以外の怒りや焦りなど、他の気分にも使える。

昔の人が困った時に仏や神に祈ったのは、もしかしたらこういう理由だったのかもしれない。自分以外の視点から物事を見てみる。自分の感情に飲み込まれそうになった時に、より大きな存在に問いかけることで、感情を客観視するバランスを保っていたのかもしれない。

神職の家系に育った私にとって、この感覚はとても腑に落ちる。他の視点から物事を見てみること。それが、イライラを「自分を壊すもの」から「自分を知るもの」に変える、一番の鍵だ。

イライラを「自分を知る道具」に変える

イライラは、自分の内側からのサインだ。

なぜイライラしたのか。どこに原因があったのか。本当は何が辛かったのか。自分はどこで限界だったのか。

それを静かに見てみる。責めるためじゃなく、次に活かすために。

うまく使えば、自分をもっとよく知るための道具になる。イライラメモはそのための地図だ。書き続けると、「自分はこういう時にイライラしやすい」というパターンが見えてくる。パターンがわかれば、事前に対策できる。

それが、イライラを「感情の敵」から「人生の参謀」に変える第一歩だ。

あなたへ

完璧な親も、完璧な上司も、完璧な子どもも、夫も、部下もいない。

イライラする自分を、責めなくていい。ただ、その矛先だけ、少し気をつけてみて。

攻撃の先に、解決はない。振り返りの先に、次がある。




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参謀医Reimy より

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