夏休み、親が「燃料切れ」になる前に【後編】——ご飯・頼る先・ご褒美の補給線

夏休みに祖母と孫が庭で一緒に過ごす様子。頼ることは布陣というイメージ 子育て

夏休み最大の敵は、宿題でも猛暑でもない。

毎日3回、確実にやってくる「ご飯、どうしよう」だ。

後編は、台所と頼り先の補給線から立て直そう。


こんにちは。参謀医Reimyです。精神科専門医、二児の母でもあります。

前編では「張り切らない計画」の話をしました。後編は実践編です。ご飯、頼り先、ご褒美、そして精神科外来で見てきた「夏の失速」の話まで。


こんなあなたへ。

  • 夏休みのご飯作りを考えるだけで、気が重くなる
  • 祖父母や学童、シッターに頼ることに、うしろめたさがある
  • 毎年8月の後半、気づけば自分が空っぽになっている

読めば、「ご飯問題を軽くする具体策」と「罪悪感なく頼る考え方」が分かります。

⏱ 10秒まとめ 
・ご飯は「作らない選択肢」を夏の初めに揃えておく
・頼り先の確保は夏の最初の仕事。感謝は「ありがとう」の形で、その日のうちに
・ご褒美デーと夜5分の振り返りが、40日をもたせる

最大の敵は「ご飯問題」|作らない選択肢を先に揃える

台所の布陣は、夏が始まる前に敷いておく。

給食のありがたさを、親は夏に思い知る。

実際、小学生の親602名への民間調査では、夏休みに大変なことの1位は「昼ごはん作り」、2位は「1日3食作ること」だった(1)。約2,500名規模の別の調査でも「自宅での食事の準備」が大変なことの1位で、夏休みに疲れを感じる保護者は約8割にのぼる(2)。いずれも公開情報にもとづく一般情報だが、外来での実感とよく一致する。

だから、作る腕を磨くより先に、「作らない選択肢」を並べておくことをすすめたい。

作らない選択肢使いどころ
宅配・出前(フードデリバリー)暑くて買い物にも出たくない日
冷凍弁当・宅食在宅ワークの昼や夜。ストックはお守りになる
スーパーの惣菜罪悪感は不要。立派な戦力
ミールキット「作った感」も少し欲しい日
子ども食堂・地域の食支援月1〜2回開催が多い。開催日をカレンダーへ
迷ったら麺そうめん・冷やしうどんに戻る

宅配や宅食は、家計との相談になる。お金をかけない補給線も、ちゃんとある。

地域の子ども食堂は、家計にかかわらず誰でも参加できる、地域の食卓だ。子どもは友だちと食べ、親も一息つける。多くは月1〜2回の開催なので、開催日を先にカレンダーへ書き込んでおくとよい。

自治体のファミリー・サポート・センター(ファミサポ)は、送迎や預かりを低料金で頼める制度。ただし事前の登録と面談が必要で、利用開始まで数週間かかる地域もある。思い立ったら、まず登録だけでも済ませておこう。

「お住まいの市区町村名+子ども食堂」「+ファミサポ」で検索を。補給線は、太さより本数だ。

外来では、食事の用意がうまくいかないことをきっかけに、気持ちが沈んでしまう方にお会いすることがある。まじめな方ほど、そうなりやすい。

でも、食事の準備は、愛情の量り売りではない。

子どもと笑って食卓につけるなら、その皿が誰の手で作られたかは、二の次でいい。

頼ることは「撤退」ではなく「布陣」だ

頼り先の確保は、夏休み最初の仕事にしていい。

仕事に夏休みがない家庭では、祖父母、学童、保育園、一時保育、シッター。使えるものは、ためらわず使ってほしい。地域や企業の子ども向けイベントに参加させるのも、立派な選択肢だ。

そして忘れがちなのが、いちばん近くの大人——配偶者・パートナーだ。どちらが休みを取るか、昼ご飯は誰が用意するか。夏が始まる前に、一度だけ作戦会議をしておきたい。頼り先リストの一番上は、本来ここである。

まわりの支えが乏しいことは親の燃え尽きのリスク要因であり、支えがあることは守りになる、と研究の積み重ねから示されている(3)。

頼ることは、戦線からの撤退ではない。長い夏を戦い抜くための布陣である。

感謝は「ありがとう」の形で、その日のうちに

頼る力を長持ちさせるのは、感謝の言葉だ。ただし、形をまちがえないこと。

祖父母にも、シッターさんにも、学童の先生にも、そしてパートナーにも。感謝は、その日のうちに言葉にする。できれば、子どもの前で。

親が誰かに「ありがとう」を言う姿は、子どもが感謝を学ぶいちばんの教材になる。親の感謝のふるまいを日常的に見せること(モデリング)や、感謝について親子で会話することが、子どもの感謝の心を育てる主要な方法であることは、親子を追った一連の研究で報告されている(4)。

ただし、ここでひとつだけ、強くお願いしたいことがある。

感謝は「ありがとう」の形で。「すみません」の形にしない。

同じ場面でも、言い方はふた通りある。

  • 感謝型:「今日はありがとうございました。楽しかったって言ってました」
  • 謝罪型:「すみません、うちの子がご迷惑をおかけして」「手のかかる子で申し訳ない」

そばで聞いている子どもが受け取るメッセージは、まるで違う。感謝型なら「自分は歓迎される存在だ」「大人同士がありがとうを交わしている」。謝罪型なら「自分は迷惑な存在なのだ」「自分のせいで、親が頭を下げている」。

日本の大人の「感謝」は、つい謝罪型になりがちだ。恐縮こそ礼儀、という文化があるからだ。でも、子どもの前での謝罪型は、やめてほしい。

子どもは、自分に向けられていない大人同士の評価の言葉を、横でちゃんと聞いて取り込んでいる。立ち聞きした評価コメントだけで、5歳児の努力や能力についての考え方が変わることが、実験で示されている(5)。

「うちの子は手がかかる」を繰り返し聞いた子が、何を取り込むか。想像に難くない。

だから、型はこうだ。

「今日はありがとうございました。助かりました」。そこに、子どもの良かった様子をひとこと添える。「水遊びが楽しかったって言ってました」。そして、子ども自身にも「ありがとう」を言わせてあげる。

それだけで、頼り頼られる関係は驚くほど長持ちし、子どもは「頼ること」と「感謝すること」をセットで学んでいく。

親のご褒美デー・タイムを決めておく

ご褒美は「残ったらあげるもの」ではなく、先に置くものだ。

週に1回のご褒美デー。外食でも、かき氷でも、アイスでもいい。

子どもと「楽しかったね〜」と話しながら、おやつに一緒にアイスを食べる。

1日15分のご褒美タイム。子どもが動画を見ている横で、好きなお茶を淹れて飲む。

がんばれたらご褒美、ではない。続けるために、先にご褒美を置く。順番を逆にするだけで、40日の景色は変わる。

ママ友のひとりは、ふだんは買わないマクドナルドのハッピーセットを切り札にしていると教えてくれた。親は楽できて、子どもは喜ぶ。週に1回は自分に許可を出すと決めていて、「今日はもうご飯を作れない、無理だ」という日の奥の手にしているそうだ。とてもいい作戦だと思う。

日程も中身も、途中で適宜変えてかまわない。計画と同じで、ご褒美も練り直していいのだ。

これは前編で書いた「親の楽しみを書き込む」の、日々の実行版だ。

夜5分、「今日の一番」を楽しく振り返る

一日の締めくくりは、反省会ではなく打ち上げにする。

寝る前に、子どもと「今日の一番」を言い合う。

幼児期の親子の「振り返り会話」を長く追った研究では、のちの心の健やかさとの関連が報告されている(6)。夜5分で同じ効果を約束するものではないが、費用も副作用もない習慣として、私はすすめたい。

そして親自身は、今日できたことを、ひとつだけ数える。

「絵本を1冊読めた」「お惣菜で乗り切れた」。それでいい。

もし何も思い浮かばなければ、元気にけがなく過ごせた、でいい。のんびり過ごせた、でもいい。ありがとうを言葉にする習慣が幸福感を高めることも、多くの研究をまとめた解析で報告されている。効果は小さいが、副作用もなく、タダだ(7)。

できなかったことは、数えない。夜に数えるのは、できたことだけでいい。

外来で見てきた「夏の失速」パターン

先に倒れるのは、いつも“ちゃんとした人”だ。

精神科外来には、夏に消耗した親御さんが訪れる。以下はいずれも、複数の事例を組み合わせ、細部を改変した紹介であることをお断りしておく。

教育熱心のあまり計画をぎっしり組み、進まない子どもにイライラし、夫に当たって自己嫌悪に沈む方。自宅での夏祭りやお誕生日会の準備に凝りすぎて、眠れなくなる方。

子どもの友だちの行き来が続いて家が回らなくなり、ママ友との関係にまでひびが入る方。「人に頼るのが苦手で」と、ぜんぶ独りで抱えてしまう方。

共通点は、一生懸命で、まじめで、完璧主義であることだ。

つまり、失速は人格の欠点ではなく、がんばりの副作用として起こる。

そしてもうひとつ。夏休みの間は気を張って持ちこたえ、9月、10月になってから、糸が切れたように受診される方もいる。

子どもの側も、長期休み明けは心が揺れやすい時期として、国が学校などに注意を呼びかけている(8)。

親も子も、疲れを9月に持ち越さない夏にしたい。

9月の自分へ、燃料を残す

いい夏休みとは、9月を笑って始められる夏休みだ。

最後に、後編の布陣を点検しよう。

✅ ご飯の「作らない選択肢」を3つ以上、用意したか

✅ 頼り先をひとつ確保したか

✅ 感謝は「ありがとう」の形で、謝罪型ではなく感謝型で伝えたか

✅ 親のご褒美デー・タイムを決めておいたか

✅ 夜の振り返りは「できたこと」だけにしたか

✅ イライラや涙のサインが出たら、休むと決めているか

よくある質問(FAQ)

Q1. 祖父母に頼るのが心苦しいです。

頼られることが張り合いになる祖父母も、少なくありません。心苦しさを減らすコツは、感謝を言葉にすることと、子どもの様子を写真や一言で共有することのセットです。一方で、祖父母側の疲れが見えたら、学童や一時保育、シッターと組み合わせて負担を分散してください。頼り先は一本より、数本が安全です。

Q2. 祖父母は遠方で、学童も空きがなく、頼り先が見つかりません。

まず、あなたが悪いのではありません。頼り先が見つからないのは、探し方ではなく、地域の資源の問題であることが多いのです。

それでも打てる手はあります。①自治体のファミリー・サポート・センターや一時預かり事業(登録に時間がかかるため、まず子育て支援課に電話を)、②児童館や図書館など「親が付き添うが、家事から離れられる場所」、③費用はかかりますが、一日単位で使える民間の預かりやオンライン学童。
最近は、学童保育型英語スクールも増えてきていて私の周りでは利用しているママさんが多い印象です。長期休暇になるとイベントを開催し、会員でなくても参加費を払えば参加できることが多いようです。

そして、物理的な頼り先がどうしても確保できない夏は、家事と理想の水準を下げることが、そのまま補給線になります。「作らない選択肢」と「ご褒美」を、思い切ってたくさん取り入れてください。

限界を感じたら、地域の子育て相談窓口や保健師さんに電話することも、立派な布陣のひとつです。

Q3. 惣菜や冷凍食品ばかりで、栄養が心配です。

1食ごとではなく、1週間単位でざっくり眺めれば十分です。主食・たんぱく質・野菜がだいたい揃っていれば、毎食手作りでなくても大きな問題はありません。私は、お味噌汁などの汁物に野菜やきのこをたっぷり入れるようにしています。サラダや野菜炒めを食べてくれなくても、これで安心できます。極端な偏りが長く続く、体重の増減が目立つ、といった場合は、小児科や保健師さんに相談してみてください。

Q4. 子どもの友だちが毎日遊びに来て、正直つらいです。

まず、家のルールを先に決めて、子どもにも伝えておきましょう。「来ていいのは週◯回、◯時まで」。ホスト役をわが家だけが引き受け続ける必要はありません。モヤモヤが続く相手とは、少し間合いを取るのも立派な戦略です。おもてなしより、あなたの心のほうが大事です。疲れやつらさを感じたら、引き受けるのを少し休みましょう。疲れていたりモヤモヤしているときは、些細なことでも気になってしまい、良い関係を続けにくくなります。

Q5. ゲームや動画ばかりで、不安になります。

時間を決めて、ご褒美として組み込むのがおすすめです。砂時計やストップウォッチのような「見える終わり」を使うと、切り上げの攻防が減ります。

もうひとつ大事なのが、終わったあとに「セットでやること」を先に決めておくこと。ゲームのあとに勉強、では切り替えが重すぎます。お風呂、夕食、外出、友だちと遊ぶ。体を動かして、画面から物理的に離れられる行動が向いています。漫画や本でもかまいませんが、本人が本好きな場合に限ります。

起きる・食べる・寝るの生活リズムさえ崩れていなければ、夏休みの間はふだんより少し長くても大丈夫——というのが、私の考えです。子どもの画面時間は親の補給時間と割り切る。あるいは、子どもとゲームをして「もう終わりかあ」と一緒に惜しみながら切り上げると、あと味よく終われます。

おわりに|40日後のあなたへ

いつか親になったわが子へ、そしてこれを読むあなたへ。

どんな夏休みにしようか。充実させてあげたいな。いろいろ体験させたいな。

そんなふうに考えている時点で、あなたは親として、じゅうぶんに素晴らしい。

40日後、「お手本のような完璧な夏だった」と言える親は、どこにもいない。

でも、「まあ、いい夏だったな」なら、今日の小さな手抜きと、小さなご褒美の積み重ねで、ちゃんと届く。

作らない日を持とう。頼る先を持とう。「ありがとう」を言おう。そして、自分にもかき氷を。

心が変わると、すべてが変わる。——夏休みも、あなたも、人生も。

参謀医Reimyより


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免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文中の事例は、複数の事例を組み合わせ、細部を改変しています。子ども食堂やファミリー・サポート・センターなどの制度・サービスの内容は地域により異なります。最新の情報はお住まいの自治体・各運営団体にご確認ください。強い疲労感や気分の落ち込み、不眠が2週間以上続く場合、「子どもや家庭から逃げ出したい」気持ちが消えない場合は、ひとりで抱え込まず、医療機関や相談窓口にご相談ください。

参考文献・参考資料

  1. パナソニック「子どもの夏休みランチ事情調査」2025年7月実施(小学生の子を持つ親602名。大変なこと1位「ランチ作り」53%、2位「1日3食作ること」51%。公開情報にもとづく一般情報)https://panasonic.jp/topics/2025/08/000001078.html
  2. ベネッセ教育情報「『夏休みは疲れる…』と感じる保護者が約8割」2025年8月公開(小学生保護者2,803名。「疲れる」76%、大変なこと1位「自宅での食事の準備」61.1%。公開情報にもとづく一般情報)https://benesse.jp/kosodate/202508/20250806-1.html
  3. Mikolajczak M, Aunola K, Sorkkila M, Roskam I. 15 Years of Parental Burnout Research: Systematic Review and Agenda. Current Directions in Psychological Science. 2023;32(4):276–283. doi:10.1177/09637214221142777
  4. Hussong AM, Coffman JL, Halberstadt AG. Parenting and the development of children’s gratitude. Child Development Perspectives. 2021;15(4):247–255. doi:10.1111/cdep.12434
  5. Zhao L, Li Y, Qin W, Amemiya J, Fang F, Compton BJ, Heyman GD. Overheard evaluative comments: Implications for beliefs about effort and ability. Child Development. 2022;93(6):1889–1902. doi:10.1111/cdev.13829
  6. Marshall S, Reese E. Growing memories: Benefits of an early childhood maternal reminiscing intervention for emerging adults’ turning point narratives and well-being. Journal of Research in Personality. 2022;99:104262. doi:10.1016/j.jrp.2022.104262
  7. Choi H, Cha Y, McCullough ME, Coles NA, Oishi S. A meta-analysis of the effectiveness of gratitude interventions on well-being across cultures. PNAS. 2025;122(28):e2425193122. doi:10.1073/pnas.2425193122
  8. 文部科学省「児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」(児童生徒の自殺は長期休業明けにかけて増加する傾向があるとして、学校等へ注意喚起する資料)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00008.htm

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