眠れない夜に薬より先に渡したい7つの処方箋|参謀医Reimyの不眠改善法

メンタル

眠れない夜は、長い。

天井を見つめながら、頭だけがぐるぐると動いている。時計を見るたびに「また30分経った」「もう2時だ」とため息をつく。

そんな夜、「もう薬でも飲んだほうがいいのかな」と思うことがあるかもしれない。

その気持ち、わかる。私も同じ経験がある。

でも待って。精神科医の私が、薬より先に渡したいものがある。それが今日の処方箋だ。

まず一つ、大切なことを伝えておく。

眠れない夜にやってはいけないことがある。それは「眠れない、眠れない」と頭の中で呪文のように繰り返すことだ。眠れないと意識すればするほど、脳は覚醒していく。眠りを「頑張って」つかもうとするほど、遠ざかっていく。これは精神科医として断言できる。

眠れない時は、「眠らなくていい」と考えることから始めよう。体を横にして休んでいれば、脳は起きていても体は休まっている。「今日は全然眠れない」と繰り返すのではなく、「明日の日中、起きていよう」「起きている間に何をしようかな」と覚醒することに意識を向けてみる。目の前の「眠れない」という状況から、頭の中だけでも脱出する。真っ向勝負せず、逃げるが勝ち、だ。

ここで一つ補足しておく。睡眠時間が短いと認知症発症のリスクが高まるという話を聞いたことがあるかもしれない。でも1日2日では変わらない。それに加齢で深い睡眠を維持する能力は弱まるし、体内時計が早寝早起き方向にずれやすくなるため早朝に目が覚めやすくもなる。眠れない夜を「病気のサイン」と思い込んで不安になることが、一番の大敵だ。不安が覚醒を呼び、覚醒がさらに不安を呼ぶ。その悪循環を断ち切ることが、まず第一歩だ。

それでは、薬より先に試してほしい7つの処方箋を渡そう。

処方箋① リズムをつけること

眠れなかった翌朝も、同じ時間に起きる。

これだけで、体は少しずつ眠り方を思い出す。睡眠専門外来で一番最初に指導することがこれだ。土日も、前日眠れなかった日も、同じ時間に起きる。完璧にできなくてもいい。少しずつでいい。

どの病院でも、精神科病棟でも、消灯時間と起床時間にルールがあるのは、このリズムを整えることが回復の土台になるからだ。
薬より先に、まずリズム。これは不眠治療の基本中の基本だ。

処方箋② 朝の光を浴びること

眠りは、夜ではなく朝から始まっている。

カーテンを開けて、太陽の光を浴びる。それだけで脳の体内時計がリセットされ、約14〜16時間後に自然な眠気が訪れる仕組みになっている。曇りでも、雨でも構わない。とにかくカーテンを開けることから始めよう。

日の出・日の入りに合わせた光の管理が、体内時計を整える一番自然な方法だ。朝は陽の光を浴び、日の入り後は部屋の電気を暗めにする。寝室の照明は温かい電球色にして、煌々と照らさず間接照明や控えめな明かりにすることも効果的だ。

光療法は、睡眠外来でも不眠や概日リズム障害の治療として実際に使われている。光の力は医学的に証明されている。

処方箋③ 体を動かすこと(ただし夜は穏やかに)

激しくなくていい。歩くだけでいい。

体が「今日も生きた」と感じると、夜に休もうとしてくれる。私は散歩が難しい時は、玄関の拭き掃除をしている。ちょっとした家事でいい。体を少し動かすだけで、夜の眠りの質が変わる。

ただし夜の激しい運動は逆効果だ。夜はストレッチやマッサージ程度に留めよう。入院中の患者さんにも、病棟内をよく歩いたり、体操したり、中庭を散歩したりすることをすすめている。日中に体を動かすことが、夜の眠りの土台をつくる。

処方箋④ カフェインを午後に摂らないこと

午後のコーヒーやエナジードリンクが、夜の眠りを邪魔していることがある。

カフェインの半減期は約5〜7時間。つまり午後3時にコーヒーを飲むと、夜10時にもカフェインが半分以上体内に残っている計算になる。

「夜飲んでも眠れる」という人もいる。でもそれは眠りが浅くなっている証拠かもしれない。深く眠れていないから疲れが取れず、またコーヒーに頼る——その繰り返しになっていないか、一度振り返ってみてほしい。まずここから見直すだけで、夜の眠りが変わる人は多い。

処方箋⑤ スマホを離し、紙の本を用意すること

「できれば」でいい。完璧にやらなくていい。

ただ、布団の中でスマホを見ていると、脳は昼間だと勘違いする。ブルーライトが体内時計を狂わせ、メラトニンの分泌を抑えてしまうからだ。

私が眠れない夜にやりがちなのは、つい携帯を見てしまうことだ。時間つぶしのつもりが、どんどん目が覚めていく。だから眠れない夜のために、紙の本や雑誌をあらかじめ用意しておくといい。電子書籍より紙の本の方が、寝る前の読書には向いている。

それから、秒針がカチカチと鳴る時計は寝室に置かないことをおすすめする。あの迫り来るような感覚が、じわじわと覚醒を促してしまう。

寝室は「眠るための場所」として脳に覚えさせることが大切だ。ソファや椅子で眠らない。床で寝ない(笑)。眠くなったらベッドへ、を体に染み込ませよう。疲れていて床に座り込んで寝てしまった研修医時代があったけれど、ちっとも良い睡眠ではなかった。疲れている時こそ、しっかり休養しないといけないのに、負のスパイラルだった。

処方箋⑥ 寝る1〜2時間前に入浴すること

体は、深部体温が下がるときに眠気を感じる仕組みになっている。

お風呂で一度体を温めると、その後に体温がすっと下がる。その下り坂が、眠りへの入り口になる。シャワーだけより湯船に浸かる方が効果的だ。ただし寝る直前の入浴は体温が高いままになってしまうので、就寝2時間前までを目安にしよう。

眠れない夜にむずむず足のような、息苦しいような、なんとも言えない不快感に襲われることがある。私も経験があるし、わが子も昼寝をしすぎた夜になりやすく、かなり苦痛そうだ。そういう時は一旦ベッドから起き上がり別室へ。飲み物を飲んだり、深呼吸したり、伸びをしたり、雑誌を眺めたりする。

むずむず足・不快感を訴える患者さんの気持ちが、この時間に本当によくわかる。頻度は稀なので薬を飲むまでではないものの、あれはかなり不快だ。「気のせい」ではなく、れっきとした医学的な症状なので、もし頻繁に続くようであれば一人で抱えず医師に相談してほしい。むずむず足症候群は、鉄分不足や疲労、妊娠中などに出やすいと言われている。

好きな香りやリラックスできる香りを寝室に用意するのもいい。リネンスプレーをひと吹きするだけで、脳が「ここは眠る場所だ」と学習していく。最近はBAUMのものを使っている。香りは、脳に直接働きかける最もシンプルなリラックス法だ。

処方箋⑦ 「眠れなくても、大丈夫」と考えること

これが一番大切な処方箋だ。
この記事の最初の方にも書いたのだが、眠れなくても大丈夫と考えることがとても大事だ。

1964年、17歳の高校生ランディ・ガードナーが264.4時間(約11日間)起き続けたギネス記録がある。それほど人間の体は粘り強い。体はどこかで必ず眠りを取り戻す。24時間まったく眠れない日が1週間続くことはない。

眠ろうと頑張るより、「まあ1日くらいはこういう日もあるか、まあいいか」と諦める勇気の方が、よく効く。昼寝30分で取り返せる。最近、寝不足は翌日に睡眠を取れば死亡リスクが上昇しない、睡眠負債を返済できる、という研究が注目されている。
それくらい、睡眠は融通が利く。

最近の私はというと、わが子に読み聞かせをするうちに自分が先に眠くなってしまうことが多い。隣でぐうぐう寝ているわが子を見ていると、なんとも言えない幸せな気持ちになって、いつの間にか寝ている。それはそれで、最高の睡眠導入剤だと思っている。

眠れない夜、「こんな夜もあるか」とスッと受け入れられるようになった時、不思議と眠れるようになっていく。

薬は、自分の力を試し終わった後の選択肢でいい

薬を否定しているわけじゃない。本当に必要な時には、力を借りていい。

でも薬は、自分の力を試し終わった後の選択肢でいい。

まずは3日間試してみよう。その調子で1週間、2週間と続けてみて。
こんなの処方箋にしなくたって知ってるよ、と思うかもしれないけれど、
本当に全部実践しているかな?
頭でわかっていても、こうやって文字で見て視覚的に脳に教えてあげることも大事。

あなたの体には、眠る力がある。まずそれを、信じてみてほしい。

参謀医Reimyより

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