【夏休みの過ごし方③・近場編】旅行に行けなくても、夏はつくれる|実家・友人宅・地元のすすめ

夏に屋外でスイカを頬張る子どもたち。近場でつくる夏の思い出のイメージ 子育て

今年も、まとまった休みが取れそうにない。

旅行に連れて行けなくて、申し訳ない。そう思っていないだろうか。

精神科専門医として、はっきり伝えたい。思い出は、遠くまで行かなくてもつくれる。


こんにちは。参謀医Reimyです。精神科専門医、二児の母でもあります。
「参謀医」とは、いずれ大きく成長したわが子、そして子育て・仕事・経営に向き合う方の「心の参謀」「人生参謀」「幸福参謀」でありたい、という思いを込めた、私が考えた造語です。

シリーズ「夏休みの過ごし方」、最終回は近場編。いちばん書きたかった回です。


こんなあなたへ。

  • 仕事が忙しく、夏休みらしい夏休みが取れない経営者・ビジネスパーソン
  • 赤ちゃんや小さな子がいて、そもそも遠出のハードルが高い
  • 旅行に行けないことを、子どもに申し訳なく感じている
  • 予定は実家への帰省くらいで、なんだか物足りない気がしている

読めば、「罪悪感を手放していい理由」と「近場で夏をつくる具体策」が分かります。

⏱ 10秒まとめ 
・思い出の条件は「距離」でも「値段」でもなく、家族で楽しんだかどうか
・週末の小さな夏らしさで、季節はじゅうぶん感じられる
・実家・友人宅・近所の公園は、立派な夏の舞台になる

「旅行に行けなくて申し訳ない」への処方箋

罪悪感は、家族の夏の敵だ。

大学を卒業してから、まとまった夏休みは、私にはほとんど縁がなかった。

そもそも社会人になると、学生のような長期休暇を取れる人は、そう多くないのではないだろうか。勤務医も同じだ。世の中がお盆で休むときこそ、病院は動き続ける。誰かが必ず現場にいなければならないから、休みは他の先生と重ならないよう、ずらして取る。

精神科の仕事は季節を問わず続くし、EC事業を行っている時は休み関係なく毎日まわしていた。学生時代の、あの長い休みとは、まるで別物だった。

それに、たとえ休みをもらえたとしても、「取るタイミングが難しいな」と、いつも思っていた。仕事の区切り、繁忙の波、まわりへの気がね。学会で1日2日休むことすら難しいのに、夏休みなら尚更だ。世間が休めるはずの日ほど、なぜか休みにくかった。

だから、カレンダーどおりに休めない親の気持ちは、他人事ではない。

赤ちゃんや小さな子がいて、長い移動そのものが難しい家庭も同じだろう。理由はさまざまでも、遠くへ行けない夏は、誰にでもある。

でも、知っておいてほしいことがある。

子どもの育ちを支えるのは、特別なイベントよりも、家庭の中でくり返される日々の習慣や小さな行事であることが、研究の積み重ねから示されている(1)。

飛行機に乗らなくても、ホテルに泊まらなくても、子どもの夏は成立する。

むしろ、親が罪悪感でしょんぼりしていることのほうが、子どもには伝わってしまう。

一番大事なのは、家族みんなで楽しむこと。子どもが思いっきり楽しむこと。

それだけ守れば、場所はどこでもいい。

近所の公園も、夏の舞台になる

遠くの絶景より、近くの公園の夕方だ。

緑のある環境で過ごすことと子どもの心の健康との関連は、旅行先の大自然に限った話ではない。日常の身近な緑についても報告されている(2)。

しかも興味深いことに、同じ緑でも、主役は木らしい。

芝生よりも樹木の茂った緑が多い地域ほど心の不調が少なかった、という海外の大規模調査がある(3)。大人を対象にした研究で因果は断定できないが、木陰の多い公園を選ぶ理由としては、じゅうぶんだ。

可能なら、少し広めの、木の多い公園へ。涼しいうえに、ささやかな森林浴にもなる。

木の少ない公園でも、あきらめなくていい。

頬をなでる風、木の葉の揺れ、流れる雲。「風、来たね」と気づきを言葉にするだけで、遊びは「いま、ここ」に心を置く小さなマインドフルネスの練習になる。

夕方の公園。セミの声。じょうろ一本の水遊び。帰り道のアイス。

ポイントは、夏らしさをひとつ足すことだ。

虫とり網でも、氷入りの水筒でも、セミの抜け殻さがしでもいい。

季節の手触りがあるだけで、いつもの散歩が「夏の思い出」に格上げされる。

週末90分の「夏らしさ」メニュー

夏らしさは、イベントの大きさではなく「季節の手触り」で決まる。

平日に休めなくても、週末や休日の90分あれば、夏はつくれる。

近場の夏メニューひとこと
スイカ割り公園や実家の庭で。盛り上がり確実
ベランダ・庭のミニプール水遊びは午前中の涼しい時間に
手持ち花火バケツの水を忘れずに
流しそうめん(簡易キット)準備から子どもと一緒に
縁日ごっこヨーヨー・くじ引きを家でつくる
夏の絵本・図鑑タイム海や虫の絵本で、行った気分を先取り
朝顔・ミニトマトの世話毎朝の観察が夏の日課になる

ここでも、コツは同じ。

「今週末、どれやる?」と子どもと一緒に選ぶことだ。

自分で選べたという感覚は、子どものやる気と心の健やかさに関わることが報告されている(4)。

選んだメニューをカレンダーに書き込めば、子どもは一週間、指折り数えて待つ。

その待ち時間ごと、思い出になる。

実家・友人宅、そして自宅も「最強の遠征先」

帰省は手抜きではなく、立派な夏の布陣だ。

「実家に帰るだけ」と控えめに言う人が多いけれど、子どもの側から見てほしい。

いつもと違う家。いつもと違う匂い。祖父母がいて、いとこがいて、知らない虫がいる。

これはもう、フル装備の冒険である。

しかも実家や友人宅には、親が少し休めるという、値段のつけられない利点がある。

親の消耗を防ぐことは、家族全体を守ることでもある(この話は「育児は長期戦」の記事に詳しく書いた)。

そして、実は遠征先は「自宅」でもいい。

わが家に、友人やその子ども、祖父母を招く。それだけで、いつもの家が「特別な場所」に変わる。

来客のある日は、子どもも朝からそわそわして、家中を案内したがる。住み慣れた空間が、その子にとっての見せ場になるのだ。

正直に書くと、招く準備は、なかなか大変だ。片付けも掃除も、普段はどうにも重い腰が上がらない。

でも不思議なもので、「人が来る」と決まると、その腰が少しだけ軽くなる。

散らかりが片付き、床が光り、季節の花でも飾れば、いちばん得をするのは、ほかでもない自分たち家族だったりする。

来客は、家族へのごほうびでもある。そう考えると、少しの頑張りも悪くない。

ひとつだけ、どこへ行くにも忘れずに。

帰省先でも、招くときでも、避難場所の確認はしておこう。「大きな地震がきたら、あの小学校に集まる」。

土地勘のない場所や、大人数で過ごす日ほど、子どもと一緒に確認しておくと安心が違う。

夜は、今日の「一番」を聞いてみる

小さな一日も、語り合えば長く残る。

花火をした夜、布団の中で「一番楽しかったのは、どれ?」と聞いてみてほしい。

出来事を親子で振り返って言葉にすることが、子どもの記憶の育ちや、その後の心の健康にまでつながりうることを示した長期の研究がある(5)。

撮った写真を後日一緒に見返すのも、同じ働きをしてくれる。

90分のイベントが、語り合いによって、何年ももつ思い出に変わる。

コストパフォーマンスで言えば、これ以上の投資はなかなかない。

近場ほど、熱中症を甘く見ない

「近いから大丈夫」が、一番あぶない。

旅行なら気を張るのに、近所の公園だと、つい水筒も帽子も忘れてしまう。

でも熱中症は、遠出より、むしろ日常の中で起こる。

暑さと熱中症搬送のピークは、正午前後から15時ごろ。外で思いきり遊ぶなら、朝のうちか、日が傾いてからが安全だ。

わが家の定番は、朝9時前の散歩だ。

おにぎりを持って出て、公園のベンチで朝ごはんを食べる。それだけで、ちょっとした遠足になる。

ただし油断は禁物。真夏は9時を回ると、もうかなり暑い。「何時に切り上げるか」を先に決めて出かけてほしい。
簡単に注意事項をまとめておく。

  • 外遊びは「朝9時前」か「夕方以降」。正午前後〜15時ごろは屋内で過ごす
  • 暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラートを出発前にチェック
  • 水筒・帽子に加えて、保冷剤や冷感タオルなどの冷却グッズも「近場でも必ず」
  • ベビーカーは地面に近く、照り返しで内部が大人の体感より数℃高くなりやすい。日よけ・保冷と、赤ちゃんの様子のこまめな確認を
  • 遊ぶ場所は木陰のある公園を優先。砂地やアスファルトの広場は、芝生より照り返しが強い
  • 遊びに夢中の子どもは、自分の不調に気づかない。顔色と口数を大人が見る

「近場だし帰宅してから水を飲めばいいか」と思っていると、気づけば脱水に…。怖いけれどよくある話だ。

公的な予防情報を前もって確認しておくと安心だ(6)(7)。近場の夏こそ、軽装備で油断しないでほしい。

よくある質問(FAQ)

Q1. それでも「旅行に連れて行けない」罪悪感が消えません。

その罪悪感は、お子さんを大切に思っている証拠です。ただ、子どもの思い出に効くのは距離や値段ではなく、一緒に楽しんだ時間です。まずは今週末の90分から始めてみてください。それでもつらさが続き、気分の落ち込みや不眠を伴う場合は、疲れがたまっているサインかもしれません。無理せずご相談ください。

Q2. 夏休み、子どもが学童や留守番ばかりでかわいそうでしょうか?

共働き家庭の多くが、同じことで胸を痛めています。でも、平日を学童で過ごすこと自体は、友達との遊びがある立派な夏の日常です。そこに週末の小さな夏らしさと、夜の「一番楽しかったこと」の語り合いが加われば、子どもの夏はじゅうぶん満たされます。かわいそうかどうかを決めるのは平日の居場所ではなく、家族で楽しむ時間があるかどうかです。

Q3. 夏休み、子どもがゲームや動画ばかりで心配です。

取り上げる前に、「楽しい予定を先に置く」ことをおすすめします。花火の日、朝散歩の日、スイカ割りの日。子どもと一緒に選んでカレンダーに書き込むと、外の実体験が増えた分だけ、画面の時間は自然に押し出されます。頭ごなしの禁止は反発を招きやすいので、「代わりの楽しみ」から先に、が布陣の基本です。

Q4. 公園遊びは、何時ごろなら安心ですか?

真夏は「朝9時前」か「夕方以降」が目安です。暑さと熱中症搬送のピークは正午前後から15時ごろに集中します。朝でも水筒・帽子・冷却グッズは必ず持ち、暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラートを出発前に確認する習慣をつけると安心です。

Q5. 週末すら仕事が入ります。何ができますか?

朝の30分で大丈夫です。出勤前にラジオ体操がてら公園を一周する、朝顔に一緒に水をやる、夏の絵本を一冊読む。「パパ(ママ)と毎朝やったこと」は、立派な夏の思い出になります。予定として決めて、カレンダーに書いてしまうのがコツです。

おわりに|夏は、遠くじゃなくていい

わが子へ、そしてこれを読むあなたへ。

大人になって思い出す夏は、案外、近所の夕暮れだったりする。

縁側のスイカ。バケツに落ちる花火の音。祖父母の家の、ひんやりした畳。

遠くへ行けなかった夏を、悔やまなくていい。

その分、目の前の90分を、一緒に思いきり楽しもう。

心が変わると、すべてが変わる。——夏休みも、家族も、人生も。

参謀医Reimyより


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免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文中の事例は、複数の事例を組み合わせ、細部を改変しています。強い罪悪感や気分の落ち込み、不眠が2週間以上続く場合は、ひとりで抱え込まず、医療機関や相談窓口にご相談ください。熱中症が疑われ、意識がはっきりしない・水分が取れない場合は、すぐに救急要請をしてください。

参考文献

  1. Selman SB, Dilworth-Bart JE. Routines and child development: A systematic review. Journal of Family Theory & Review. 2024;16(2):272-328. doi:10.1111/jftr.12549
  2. Zare Sakhvidi MJ, et al. Greenspace and health, wellbeing, physical activity, and development in children and adolescents: An overview of the systematic reviews. Current Opinion in Environmental Science & Health. 2023;32:100445.
  3. Astell-Burt T, Feng X. Association of urban green space with mental health and general health among adults in Australia. JAMA Network Open. 2019;2(7):e198209. doi:10.1001/jamanetworkopen.2019.8209
  4. Bradshaw EL, Duineveld JJ, Conigrave JH, et al. Disentangling autonomy-supportive and psychologically controlling parenting: A meta-analysis of self-determination theory’s dual process model across cultures. American Psychologist. 2024. オンライン先行公開. doi:10.1037/amp0001389
  5. Marshall S, Reese E. Growing memories: Benefits of an early childhood maternal reminiscing intervention for emerging adults’ turning point narratives and well-being. Journal of Research in Personality. 2022;99:104262.

参考資料

  1. 環境省「熱中症予防情報サイト」(暑さ指数WBGT・熱中症警戒アラート等の公的情報。熱中症搬送は昼前後〜15時台に多い)
  2. 日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」(熱中症の予防・重症度・対処の医学的指針)

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