「どうして夜、寝てくれないんだろう。」
そう思いながら今日も過ごしているあなたへ。
答えは、昼間の過ごし方にある。
光とリズムの大切さは、前の手紙に書いた。朝の光、夜の暗さ、ホワイトノイズ、就寝ルーティン——あの手紙を読んでくれたなら、土台はできている。
今回は、その土台を支える「昼間の具体的な過ごし方」を書く。精神科医として、そしてあなたたちを育てている母として、実際にやってきたことだけを。
あなたにも、いつか子育てを一生懸命していて、夜なかなか寝てくれない…と悩む日が来ると思う。
例えば、こんな時に読んでほしい。
- 寝かしつけに毎晩時間がかかる
- やっと寝たのにすぐ起きてしまう
- 昼夜が逆転して、自分の睡眠が取れない
- 昼寝が多いのか少ないのか、分からない
- 散歩に行けない日の過ごし方が分からない
どれもおかしいことではない。誰もが通る道だとわたしは思っている。
📌 この記事を読むと——
・ 昼間の過ごし方が夜の睡眠に直結する理由が分かる
・ 薄暗い部屋がNGな医学的な理由が分かる
・ 夕寝してしまった日の正しい対処法が分かる
・ 散歩できない日・抱っこ紐昼寝の考え方が分かる
・ 「何もできなかった日」の罪悪感が、少し楽になる
大変な寝かしつけ、が少しでも楽になりますように。親子共に、身も心も健康に過ごそう。
昼間の部屋を「明るく」しているか
まず確認してほしいことがある。
昼間、赤ちゃんをどんな部屋に置いているか。
「寝かせなきゃ」と思って薄暗い部屋に置いていないだろうか。静かにさせようとして、カーテンを閉めたままにしていないだろうか。
これは逆効果だ。
昼間は明るい部屋で過ごさせること。直射日光が当たらないよう、レースのカーテン越しの明るさでいい。家の構造上どうしても薄暗くなる場合は、照明をつけて補ってあげてほしい。
なぜ明るさが必要か。精神科医として補足すると、朝の光でセロトニンが分泌され、その14〜16時間後にメラトニンへと変換されて夜の眠気が作られる。昼間に光を浴びることが、夜の良い眠りに直結している。赤ちゃんも大人も、体の仕組みは全く同じだ。
実際に最近の研究では、昼と夜の光のメリハリが、乳児の概日リズムの確立に有益であることが示されている(1)。
薄暗い部屋で静かに過ごさせることが「良いこと」だと思っていたなら、今日から変えてほしい。昼間は明るく、生活音がある中で過ごさせること。それが夜の眠りの土台になる。
前の手紙で「原始人」という言葉を使った。太陽が昇ったら起きる、日が沈んだら眠る——人間はもともとそういう設計だ。昼間に光の中で活動し、夜は暗闇の中で眠る。そのリズムを、赤ちゃんの頃から体に覚えさせてあげることが大切だ。
夕方に寝てしまった。起こすべきか、そのまま寝かせるべきか
これはわたしも何度も経験した。
18時頃、ぐずってぐずって、泣き疲れてそのまま眠ってしまったことがある。そういうときは、まず30分〜1時間は様子を見ることにしていた。
起こすかどうかの判断は、こうしていた。
まず、生活音を出したり部屋を少し明るくしたりして、自然に目が覚めるよう仕向ける。それでも起きなければ、おむつ替えや着替えで優しく刺激を与える。それでもまだ寝入ってしまっているときは、睡眠が足りていないサインだと判断して、そっとしてあげる。
夕方に寝てしまうのは、理由がある。日中のお昼寝が少なかった、トータルの必要な睡眠時間に対して足りていなかった——そういう可能性が高い。
翌日は日中にもう少し寝かせてあげようかな、くらいに考えればいい。
リズムがついてきたら、1〜2日こういうことがあっても大丈夫だ。完璧にやろうとしなくていい。まあ、こういう時もあるか。それくらいの気持ちで続けることの方が、長い目で見ると大切だ。
散歩に行けない日の過ごし方
毎日外に出なければいけない、という思い込みを捨ててほしい。
わたしもコロナ禍に子育てをした。思うように外に出られない時期が続いた。そういう日は、窓を開けて一緒に外を眺めた。外の空気を吸わせながら、通り過ぎる車や鳥を見ていた。それだけでいい。
ベランダや玄関先に5分出るだけでも、外気浴になる。マンションなら共用部をちょこっと歩くだけでも十分だ。
外に出られない日は、部屋の中で体が動かせるようにしてあげた。プレイマットを広げて、腹ばいにしたり、おもちゃやぬいぐるみで遊んだり。日中に体を動かすことは、夜の睡眠の質を改善することにつながる(2)。部屋の中でも、体を動かせる時間を作ってあげることに意味がある。
大事なのは「外に出ること」ではなく「光とリズムを守ること」だ。室内でも窓際の明るい場所で過ごせれば、曇りの日でも十分な照度が確保できる。生後2〜10週の乳児を対象にした研究では、日中に明るい環境にいる時間が長い乳児ほど、概日リズムがより明確に現れていたという結果が出ている。
「今日は外に出られなかった」と落ち込まなくていい。窓を開けて、明るい部屋にいて、一緒に過ごした——それで十分だ。
抱っこ紐の中で昼寝してしまう、について
散歩中や買い物中に、抱っこ紐の中で寝てしまうことがある。
これはわたしも経験した。周囲が明るければ、日中のお昼寝として睡眠時間に含めていい、とわたしは考えている。
ただ、一つだけ確認してほしいことがある。
抱っこ紐の中でだけ昼寝していて、夜になっても起きている——というパターンが続いているなら、少し立ち止まって考えてみてほしい。
抱っこ紐の中では体をほとんど動かせない。心地よい疲労が溜まりにくい。それに加えて、昼間に寝過ぎている可能性もある。外出や買い物、テーマパーク利用などで長時間抱っこ紐やベビーカーを利用することがあるかもしれないが、実はWHOのガイドラインでは、1回につき1時間以上抱っこ紐やベビーカーなど拘束された状態に置き続けないことが推奨されている(3)。体を自由に動かせる時間を確保することが、健全な発達と睡眠の質につながる。昼間のお昼寝としては問題ないが、夜のリズムに影響しているなら、昼間に体を動かせる時間を意識的に作ってあげることを考えてみてほしい。
泣いているのが、ただ眠くてぐずっているだけの場合も多い。そういうときは、昼間でもベッドに置いておいていい。抱っこ紐の中で寝かしつけなければならない、と思い込まなくていい。
上の子がいる場合
上の子がいると、理想通りのリズムを作るのが難しいと感じる人も多いと思う。
でも、そこまで難しく考えなくていい。
お日様が出ている時間帯は、上の子に合わせてしまっていい。幼稚園の送迎があっても、お出かけがあっても大丈夫だ。
わたしが守ることにしていたのは、夜寝かせる時間と朝起きる時間だけだ。前の手紙にも書いたが、就寝は20時半〜22時、起床は6時〜7時半と、2時間程度の幅を持たせている。その中に収まっていれば、ま、いっかと思うようにしていた。
上の子が遅く帰ってくる日もある。そういうときは、夕食をすぐに食べられるよう準備しておいて、下の子は別室で照明を暗くして空気清浄機をかけながら先に寝かしつける。上の子の生活音が聞こえても、空気清浄機がある程度カバーしてくれる。
完璧なリズムは作れなくていい。大事なのはざっくりとした流れを守ることだ。
スマホと光の話
授乳中にスマホを見てしまうこと、わたしもあった。正直に言う。
昼間の授乳中のスマホは、わたしは良しとしていた。お母さんだって休憩が必要だし、一日中赤ちゃんだけを見ていなければならない、ということはない。
ただ、夜間は別の話だ。
暗い中で明るい画面を赤ちゃんに向けることは、できるだけしないようにした。スマホの角度を調整したり、授乳クッションの上に置き場を作ったり。工夫次第で、赤ちゃんの目に光が当たらないようにすることはできる。
テレビがついている近くに座らせることも、夜はしなかった。音も光も、夜の刺激としては強すぎる。夜間のスクリーン使用は、就寝の遅れや睡眠の質の低下と関連する(4)。さらに、子どもは大人よりも画面の青色光でメラトニンが抑制されやすいことも確認されている(5)。大人が思うよりずっと強い刺激だということを、頭に置いておいてほしい。
昼間と夜で、光の使い方を変えること。それだけを意識してくれれば十分だ。
「何もしていない日」のあなたへ
昼間、何もせずに過ごしてしまった。散歩にも行けなかった。特別なことは何もできなかった。
そう感じている人に、伝えたいことがある。
そばにいたことが、一番良いことだ。
お母さんが近くにいる、という空気感。それだけで赤ちゃんは安心する。リラックスして、のびのびと成長できる。良い空気と光の中で植物がすくすく育つように、お母さんの存在が赤ちゃんの成長の土台になっている。
散歩しなければ、イベントに参加しなければ、何かしてあげなければ——そう焦る必要はない。
一緒にぼーっとする時間、お昼寝する時間、絵本を読む時間。それは赤ちゃんの成長と発達にとって、必要で重要な時間だ。「お母さんとリラックスできる時間を作ってあげた」と、そう考えてほしい。
精神科医として補足するなら、乳児期の安定したアタッチメント(愛着)は、その後の認知発達・情緒調整・社会性の基盤になることが多くの研究で示されている。お母さんが穏やかにそこにいること、それ自体が赤ちゃんへの最良の働きかけだ。
何もしていない日なんて、ない。
最後に、頑張っているあなたへ
昼間の光、リズム、散歩できない日の工夫、夕寝の判断、スマホの使い方。
どれも完璧にやる必要はない。
昨日よりちょっとだけ意識できた、くらいでいい。リズムがついてくれば、1〜2日うまくいかない日があっても、ちゃんと戻ってくる。
夜にぐっすり眠る子の秘密は、昼間にある。
それだけ覚えておいてくれれば、この手紙の役割は十分だ。
参謀医Reimyより
参考文献
(1) Kok EY, et al. The role of light exposure in infant circadian rhythm establishment: A scoping review perspective. European Journal of Pediatrics. 2025;184:112.
(2) Zhao H, et al. Physical activity and sleep quality association in different populations: a meta-analysis. Int J Environ Res Public Health. 2023;20(3):1864.
(3) World Health Organization. Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age. WHO; 2019. / Bianconi E, et al. How strong is the evidence supporting the WHO guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep in early childhood? Eur J Clin Invest. 2024;54:e14294.
(4) Higher screen use is associated with delayed bedtimes, shorter sleep duration, and poorer sleep quality in children and adolescents. Sleep Health. 2023.
(5) Higuchi S, et al. Melatonin suppression and sleepiness in children exposed to blue-enriched white LED lighting at night. Physiol Rep. 2014;2(12):e12154.
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