部下を守るあなたが倒れないために|上司・経営者の孤独とセルフケア|参謀医Reimy

高層階の窓辺から街を見おろす、経営者らしき人物のシルエット。リーダーの孤独とセルフケアを象徴するイメージ。 働き方・経営

部下のメンタルを気づかい、職場を守り、判断を一身に背負う。

そんな毎日のなかで、あなた自身は、誰かに頼れているだろうか。

ひとつでも思い当たるなら、どうか最後まで読んでほしい。

  • 部下のことばかり気にして、自分のケアは後回しになっている
  • 弱音を吐ける相手がいない。立場上、言えない
  • 「自分が止まったら回らない」と、いつも気を張っている

読み終えるころには、きっとこう感じているはずだ。

👉 「部下の人生まで背負わなくていい」と、肩の力が抜ける。

👉 抱え込まずに長く走り続けるための、“参謀”の持ち方が分かる。

👉 弱音を“部下を安心させる力”に変えるコツが分かる。


こんにちは、参謀医Reimyです。

神職と参謀の家系に生まれ、いまは精神科専門医として、二児の母として生きています。

この記事は、「参謀医の職場メンタル・シリーズ」全3回の③【上司自身編】、最終回です。

①では部下への接し方と働かせ方を、②では見極めと受診のすすめ方を扱いました。


いちばん見落とされる人|それは、上司のあなた

ここまでのシリーズでは、部下の話をしてきた。

でも、参謀医として、本当に伝えたいのはここからだ。

まず、肩の力が抜ける話を、ひとつ。

あなたは、部下の人生まで背負う必要はない。

背負い続けたら、こちらが先に、限界が来てしまう。

部下のメンタルを誰よりも気にかけている人、つまりあなた自身が、いちばん消耗していないだろうか。

気づけば、孤独感も、少しずつ増していく。

「自分のことより、まず周りを」。

それは、本当に素晴らしい心構えだ。

でも、あなたが倒れてしまったら、元も子もない。

部下には「つらかったら相談して」と言えるのに、自分は、誰にも言えない。

これは、立場が上がるほど陥りやすい、よくある落とし穴だ。

そして、これは「気の持ちよう」では済まされない。

孤独や、人とのつながりの少なさは、心だけでなく、体の健康にもはっきり影響する。

220万人以上を対象にした近年の大規模研究でも、孤独や社会的な孤立が、死亡リスクの上昇と関連することが示されている(1)。

孤独は、もはや「さみしいね」で片づく話ではない。健康にかかわることなのだ。


私がこれまで見てきた経営者にも、いろんな方がいた。

「いや〜、孤独っすね」と、明るく笑う人。

「一人で決められるのは楽しい。でも、辛い」と、しんみり語る人。

表し方は違っても、孤独は、上に立つ人に、等しく訪れる。

だからこそ、抱え込まないでいい。


私自身、組織のなかで、相談しにくさを感じたことはある。

周りが忙しそうにしていたり、質問に質問で返してくる人がいたり。

それでも私は、患者さんのため、より良い選択のためなら、疑問を周囲に相談することに、ためらいはなかった。

ただ、ひとつだけ、難しかったことがある。

先輩という立場になると、後輩には弱音を吐きにくい。

「しっかりしていなきゃ」と思ってしまうのだ。

だから私は、あえて少しだけ、自分の苦労を後輩に話すようにしていた。

「先輩でも、こんなふうに悩むんだ」と知ってもらうことが、後輩を安心させると思ったからだ。

弱音は、ただの泣き言ではない。

見せ方しだいで、部下を安心させる“メッセージ”にもなる。

完璧に強い上司より、「悩みながらも前に進む上司」のほうが、人はついていきたくなる。


私が実践している、孤独と疲れの「手放し方」

精神科医として、そして一人の人間として、私自身が続けている方法を、正直に書いてみる。

特別なことではない。でも、効く。

まず、いちばんの土台は、よく寝ること。

疲れているとき、孤独を強く感じるときほど、まず睡眠を確保する。睡眠は、心を回復させる、いちばんの薬だ。

次に、静かに一人でいる時間を、意識してつくる。

リーダーは、人に囲まれているのに孤独、ということが多い。だからこそ、誰にも気をつかわない時間が、回復になる。

好きなことをする時間も、後回しにしない。好きな動画を見る。本を読む。それだけで、頭の中の景色が、少し変わる。

それから、医学的にも理にかなった方法を、ひとつ。

シャワーを浴びるとき、顔を洗うとき、その水の感覚を、ていねいに味わう。

そして、嫌だったこと、悲しかったことを、水と一緒に流すイメージを持つ。

“今ここ”の感覚に意識を戻すこの習慣は、マインドフルネスそのものだ。ぐるぐる回る思考から、少しだけ距離を置ける。

好きな香りも、小さな味方になる。

ハンドソープやボディソープを、好きな香りに変えるだけでもいい(余裕があればアロマも。今は赤ちゃんがいるので控えているけれど)。

香りは、気分をいちばん早く切り替えてくれるスイッチのひとつだ。

そして、いちばん大事なこと。

本当のことを、話す。

強がりでも建前でもなく、本音を。それができる相手を持つこと。これが、孤独をいちばん和らげてくれる。


一人で抱えないための、具体的な「頼り方」

「相談しよう」と言われても、誰に、どう話すかが難しい。

だから、私の実例を具体的に書く。

私の場合、まず同業の友人、つまり同じ精神科医の友人に相談する。

同じ母親でもあるので、仕事の悩みも、子育ての悩みも話せる。

ポイントは、自分と同じ環境にいる人、話しやすい人を選ぶこと。

家族にも頼る。参謀である父をはじめ、母、妹、夫、義母や義姉夫婦にも相談する。

職場では、上司にも後輩にも相談する。

そして、相談の前に、必ずやることがある。

自分の悩みを言葉にして、紙に書き出すこと。

書くだけで、頭の中が整理される。そのうえで、聞きたいことをまとめてから質問する。

💡 相談前のひと手間 モヤモヤを紙に書き出す → 質問の形にまとめる。これだけで、相手も答えやすく、自分の中も整理できる。

ただし、付き合い方には気をつけている。

どんなに仲の良い相手でも、依存しすぎない。頼りすぎない。

相手の負担も考えて、一度にたくさんの悩みをぶつけないようにする。

それから、これは大事な気づきなのだけれど。

仕事の孤独は、仕事とまったく関係ない人と話すだけでも、ずいぶん和らぐ。

メンタルケアに直接関係のない友人・知人・家族と、ただ話す。それだけで、心は保たれる。

仕事以外のつながりを大切にすることが、巡り巡って、仕事の孤独をやわらげてくれる。


医師でも、リーダーでも、頼っていい

正直に言うと、私自身は精神科にかかったことはない。

精神科医なので、自分の不調には早めに気づいて、自分で手当てしようとする。

でも、それは“職業柄”であって、誰にでもおすすめできることではない。

むしろ、専門家を頼ることは、弱さではない。

私自身、家族の不調には早めに気づいて、信頼する上司の先生を紹介したことがある。

専門医試験の対策でも、上司にためらいなくアドバイスを求め、たくさん教えてもらった。

年功序列や上下関係は、いい意味であまり気にしない。

その人の経験や、考えや、積み重ねてきた学びを吸収できる機会は、決して逃さない。

頼ることは、弱さではなく、前に進むための、いちばん賢い選択なのだ。

だからあなたも、つらさが続くなら、専門家を頼っていい。

リーダーだから、と我慢する必要はない(受診の目安は、後ほどよくある質問で)。


やめたほうがいい「逆効果のストレス解消」

最後に、これだけは避けてほしい対処を挙げておく。

いちばんは、お酒とたばこ。

その場は楽になった気がしても、睡眠の質を下げ、長い目で見るとメンタルを削っていく。

寝不足や夜更かしも同じだ。

とくに、疲れているのに「夜だけは自分の時間」とつい夜更かししてしまう、いわゆる「リベンジ夜更かし」。

実は、私自身もやりがちだ。気持ちは痛いほど分かる。でも、翌日の自分を、確実に削ってしまう。

買い物も、ほどほどなら気晴らしになる。でも、衝動買いや買い物依存には注意したい。

結局、物を買っても、心は満たされない。それが、正直なところだ。実際、物やお金を重視する傾向が強い人ほど、心の満たされ方(幸福感)は低くなりやすいことが、近年のメタ分析でも示されている(2)。

私は、数を増やすより「お気に入りを少し」。たとえば、時短でも“お気に入りの・質のいいコーヒー”を選ぶ、というふうにしている。

それから、言葉の選び方も大切だ。

参っているときは、自分を追い込むような言葉を、あえて目に入れない。読んでも、サラッと流す。

SNSでよく見る「もっと頑張れ」式の強気な言葉も、今の自分に合うものだけを選ぶ。

もし、そういう言葉に妙に批判的になっている自分がいたら、それは、ちょっと疲れているサインかもしれない。睡眠が足りないだけでも、人は否定的な刺激に強く反応しやすくなることが、脳科学の研究でも示されている(3)。

そして、これはたくさんのリーダーを診てきて、思うこと。

強い言葉を発信している人にも、必ず悩みや不調がある。

どんなに堂々として見える人にも、だ。

だから、誰かの“強さ”と、自分を比べなくていい。


上司になった今だからできること|部下だった頃を思い出す

上に立つと、つい忘れてしまうことがある。

部下の仕事の大変さが、どこか“ひとごと”に感じられたり。

「自分も同じ苦労をしてきた。だから、お前もやれ」と思ってしまったり。

でも、思い出してほしい。

あなたが部下だったころ、感じていた違和感を。

「これ、おかしいな」と思った、あのルールを。

せっかく上の立場になったのなら、悪い習慣は、あなたの代で断ち切っていい。

「昔からこうだから」を、会社のために見直せる人がいる。

それは、組織にとって、何よりの財産だ。


できる人ほど、一人で決めない|“参謀”を持つということ

最後に、参謀医として、いちばん伝えたいことを書く。

国を代表するような立場の人でさえ、悩みを抱えている、と私は思う。

常に部下のこと、組織のことを考え、どう良くしていくかを考え続ける。

我が子のようにかわいい部下にも、時には厳しいことを言わねばならない、その葛藤。

新しく人を迎えるとき、何を基準に選べばいいのか。見た目だけでは、人は見抜けない。

事務所をどこに構えるか、一人では決めきれないこともある。

そんなとき、できる人ほど、信頼できる相談相手=“参謀”の力を借りる。

ここで、ひとつ、おもしろい話を。

ずっとずっと昔、古代中国では、戦いのタイミングや進退を、占いで決めていたという。そんな話を、以前、新聞で読んだことがある。

大事な決断を、自分だけで抱えない。何かの“ものさし”を借りる。

その知恵じたいは、大昔からあったわけだ。

でも、ここが分かれ道。

占いや助言を「判断材料のひとつ」にするのは、いい。

問題は、それを“神頼み”にしてしまうこと。

うまくいかないときに「占いのせい」「あの人のせい」にしてしまうからだ。

「誰かのせい」にしているうちは、前に進めない。

父や祖父は凄腕の参謀だったと思う。でも、残念ながら、こんな人もいたようだ。

会社の業績の悪化も、自分の病気や不摂生さえも、何か悪いことが起きると、父や祖父のせいにする。

どんなに優れた参謀が、命がけで一緒に戦い、守ろうとしても、だ。

トップがその姿勢では、人は、いずれ静かに離れていく。

そのうち、その人は、父や祖父からも距離を置くようになった。

そして、会社は少しずつ傾いていく。

助言を活かせるかどうかは、結局、受け取る人の姿勢しだいなのだ。

逆に、助言を素直に受け入れて進む人は、運も掴む。

そしてうまくいかなくても、人のせいにせず、原因を考え、解決し、また進む。

良いものだけを選び抜き、素直に考える。


実際、良きメンターや参謀に出会い、その力を借りながら会社を大きくしていった経営者は、たくさんいる。

知り合いの経営者の紹介が、人生を変えることもある。

ただし、良い参謀、腕利きの参謀に出会えるかどうか。

そして、その助言を活かせるだけの“軸”と“覚悟”が、自分にあるかどうか。

そこで、会社の運は大きく左右される。

どんなに良い助言も、受け取る器がなければ、活きないのだ。


そして最後に、もうひとつだけ。

適切に休み、生活リズムを崩さない。

これが、長く走り続ける人の、いちばんの土台だと思っている。


すべての土台は、生活と「挨拶」

一人で組織を回すのは、想像以上に責任が重い。

家庭でいえば、母親が家をまわすのに、少し似ている。

母がいないと家がまわらないように、組織もリーダーがいないとまわらない。

たとえ一匹狼で、誰の人間関係も気にせず会社をやっているとしても、自分自身の健康とメンタルだけは、気にかけてほしい。

そのうえで、悩みを聞いてもらえる存在を、近くに置いておく。

同じ立場の経営者仲間、同じ職業の友人、あるいは他の責任ある仕事につく知人。職種は違っても構わない。

睡眠不足や不摂生を避ける。当たり前のようでいて、これがいちばん効く。

そして、もうひとつ。私が神職と参謀の家系に育って、心から実感していることがある。

それは——挨拶を、必ずすること。

子どもの頃から見てきて、挨拶やお礼をていねいにする人ほど、たいてい“すごい人”だった。

国を動かすような人、名を残すような人ほど、そうだった。

逆に、挨拶ができない人は、なぜか大物にはなれない。

組織を持つ経営者・リーダーなら、コミュニケーションのいちばんの基礎である挨拶を、ぜひ徹底してほしい。

ていねいな挨拶やお礼は、ただ感じがいいだけではない。まわりの信頼を少しずつ積み上げ、いざというときに助けてもらえる関係を育ててくれる。反対に、礼を欠いた接し方(無礼さ)は、職場の人間関係や成果、働く人の心身にまで悪影響を及ぼすことが、20年分の研究をまとめたメタ分析でも示されている(4)。

孤独なあなたを、最後に守ってくれるのは、そうやって日々築いた、人とのつながりだから。


まとめ:今回の要点

  • 部下の人生まで背負わなくていい。あなたが倒れたら、元も子もない。
  • 孤独は性格ではなく、立場ゆえに訪れるもの。しかも健康のリスクにもなる。
  • 手放し方:よく寝る/一人の時間/水の感覚やマインドフルネス/好きな香り/そして本音を話す。
  • 頼り方:話しやすい人を選び、悩みは紙に書いてから。依存しすぎず、仕事以外のつながりも大切に。
  • お酒・たばこ・リベンジ夜更かし・衝動買いは逆効果。自分を追い込む言葉は、参っているときは見ない。
  • 専門家を頼るのは弱さではない。つらさが2週間以上続くなら、迷わず相談を。
  • すべての土台は、睡眠などの生活習慣と、人とのつながり。基本は「挨拶」から。

よくある質問(FAQ)

Q1. 部下のことばかり気にして、自分が限界です。どうすれば?

A. それは、あなたが「いちばん見落とされている人」だというサインです。孤独や社会的孤立は、健康のリスクにもなることが分かっています(1)。一人で抱え込まず、信頼できる相談相手を、意図的に持ってください。そして、よかったら、こっそり私のブログをのぞきに来てください。強くあるためにこそ、弱音を吐ける相手や場所が、必要です。


Q2. 「強くあらねば」と思うと、弱音が吐けません。

A. その気持ちは、よく分かります。でも実は、すきのない“完璧な上司”より、悩みながらも前へ進む姿を見せる人のほうが、部下は安心してついてきます。弱音を少しだけ見せることは、相手を安心させる合図にもなるのです。一人で決め込まず、信頼できる“参謀”を持つこと。そして、休養と生活リズムを守ること。それが、長く走り続けるための土台になります。


Q3. 自分自身が心配です。いつ、専門家に相談すればいいですか?

A. 目安は「2週間」です。気分の落ち込み、眠れない、何をしても楽しめない、食欲や体重の変化などが2週間以上続くなら、早めに相談してください。リーダーだから、強くあらねば、と我慢する必要はありません。早く相談するほど、回復も早くなります。まずはかかりつけ医や産業医に話すところからでも大丈夫です。専門家を頼ることは、弱さではなく、賢い選択です。


最後に|強くあるために、弱さを認める

一人で決めなければいけない。強くいなければ、部下を安心させられない。

その気持ちは、よく分かる。実際、その通りでもある。

でも、周りに置く人に気をつけるだけで、毎日は驚くほどラクになる。

信頼できる人。一緒に働いて楽しい人。組織のために動ける人。

そういう仲間を選び抜く力こそ、上に立つ人にとって、いちばん大事な能力かもしれない。

良いものを選び、素直に考え、人のせいにしない。

そして、適切に休み、生活リズムを崩さない。

部下を守れる上司は、まず、自分を守れる上司だ。

あなたが倒れずに笑っていること。それが、組織にとって最大の力になる。

心が変わると、すべてが変わる。——経営も、組織も、人生も。

参謀医Reimyより


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の方への診断・治療・助言に代わるものではありません。状態や適切な対処は、人によって異なります。なお、本文で紹介した体験は、個人が特定されないよう、細部を変えて記しています。気分の落ち込み・眠れない・強い不安などが2週間以上続く場合や、つらさが大きいときは、ひとりで抱えず、かかりつけ医、産業医や地域の精神科などの医療機関・相談窓口へご相談ください。

参考文献

  1. Wang F, Gao Y, Han Z, et al. A Systematic Review and Meta-Analysis of 90 Cohort Studies of Social Isolation, Loneliness and Mortality. Nature Human Behaviour. 2023;7(8):1307–1319. doi:10.1038/s41562-023-01617-6
  2. Moldes O, Zaleskiewicz T, Gąsiorowska A. Breaking the Loop: A Meta-Analysis on the Bidirectional Effects of Materialism on Social Well-Being. Journal of Consumer Behaviour. 2025;24(1). doi:10.1002/cb.2409
  3. Ben Simon E, Vallat R, Barnes CM, Walker MP. Sleep Loss and the Socio-Emotional Brain. Trends in Cognitive Sciences. 2020;24(6):435–450. doi:10.1016/j.tics.2020.02.003
  4. Han S, Harold CM, Oh I-S, Kim JK, Agolli A. A Meta-Analysis Integrating 20 Years of Workplace Incivility Research: Antecedents, Consequences, and Boundary Conditions. Journal of Organizational Behavior. 2022;43(3):497–523. doi:10.1002/job.2568

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