「頼ればいい」と言われても、何をどう頼ればいいか分からない。
そういう声を、よく聞く。
産後のサポートには、意外と多くの選択肢がある。使わなくてもいい。でも、知っているだけで気持ちが強くなる。あの頃のわたしが、まさにそうだった。
この記事では、産後に使えるサポートを7つ紹介する。一般的な制度の概要と、精神科医・参謀医Reimy自身の実体験を合わせてお届けしたい。
この記事を読むと——
・ 産後に使えるサポートの全体像が、一気に分かる
・ 「自分はどれが使えるか」の判断基準が持てる
・ 使えなくても、知っておくことで心の余裕が生まれる
・ 頼ることへの罪悪感が、スッと軽くなる
まず「自分に使えるサービスがあるか」こちらの画像で確認してみよう。
完璧に全部使わなくていい。気になるものが一つでもあれば、お守りを増やす感覚で、読んでみてほしい。
知っておくだけで心が強くなる。 使えなくてもいい。「いざとなればある」が、しんどい日のお守りになる。
ママ友への聞き方、時間が味方になること——これは、意外と見落としがちだ。その点や最近話題のAI利用の注意点についても、サービスの後にしっかり書いているから、ぜひ続きも読んでほしい。
① 産後ケア施設|存在を知るだけで、救われる
産後ケア施設は、出産後のお母さんと赤ちゃんが、助産師や看護師のサポートを受けながら過ごせる施設だ (1)。
宿泊型・デイサービス型・訪問型の3種類がある。授乳指導、沐浴指導、育児相談、休息のための宿泊など、産後の不安をまるごとサポートしてくれる。
費用は施設によって大きく異なる。自治体の補助が使えるところもあり、市区町村によっては無料または低価格で利用できる場合もある。産院や市役所に相談すると紹介してもらえることが多い。
わたしは市役所で紹介してもらった。
その中によくインフルエンサーやタレントさんが紹介している施設も含まれていたが、「非常に高額です」と前置きがあった(笑)。
それでも、「こういう場所がある」と知れただけで、少し心強くなった。
現実的には使えなかった。上の子の学校の送迎があったし、産後ケア施設に下の子と二人で入ってしまったら、上の子が寂しい思いをする。上の子のメンタルを一番に考えると、どうしても後回しになった。
家族全員で泊まれる施設もあったが、数は限られる。やはり高額な施設の方が多かった。こういう施設がもっと手頃に、家族みんなで使えるようになったら、と今でも思っている。
使えなかったとしても、選択肢を知っておくことに意味がある。
② 産後ヘルパー|家事と育児を、プロに任せる
産後ヘルパーは、自治体が提供する育児・家事支援サービスだ (1)。
ヘルパーさんが自宅に来て、掃除・洗濯・料理・育児補助などをしてくれる。費用は自治体によって異なるが、1時間あたり数百円から利用できる場合も多い。
利用には事前登録が必要なことがほとんどなので、産後すぐではなく、妊娠中に調べて登録しておくのがおすすめだ。
わたしが経験したように、優先度の基準があり、夫がいて家族の助けもある場合は利用が難しいと言われることもある。それでも、まず相談してみることに意味がある。地域によって対応が違うので、諦める前に問い合わせてほしい。
③ ファミリーサポートセンター|地域のつながりを借りる
ファミリーサポートセンターは、地域の有償ボランティアが子どもの送迎や預かりをしてくれる制度だ (1)。
自治体が運営していて、費用は1時間あたり数百円程度が多い。「ちょっと預けたい」「送迎だけお願いしたい」といった細かいニーズに対応できるのが強みだ。
登録には事前の手続きが必要。こちらも妊娠中に登録しておくと、産後すぐに使える。
ただ地域のボランティアの人数にも限りがあるとの話だったし、どんな方がボランティアをしているかわからないといった不安はどうしても付きものだ。
④ 一時保育・病児保育|スポットで預けられる安心感
一時保育は、保育所や認定こども園が空き状況に応じてスポット的に預かってくれるサービスだ (1)。
「少し休みたい」「用事がある」という理由でも利用できる。病気の子どもを預かってくれる病児保育も、自治体や病院に付設されている場合がある。
登録が必要なところが多いので、使う前に余裕を持って登録しておくこと。「いざとなれば使える」という安心感が、気持ちをずいぶん軽くしてくれる。
私も偶然近くに医局の先輩の同級生が開業したという小児科があることを知り、病児保育も隣接していたため早速登録をした。こういう縁は、ありがたかった。
⑤ 家事代行・シッター|信頼できる人に出会えるかどうか
家事代行は、掃除・洗濯・料理などを代わりにやってもらえるサービスだ。最近はスポット利用ができるサービスも増えていて、利用しやすくなっている。
シッターを頼む場合は、できれば知人からの紹介など信頼できるルートからお願いできたら、なお安心だ。あなたの学校のお友達も、シッターさんが送迎していたよね。素敵なシッターさんで、信頼してお願いできているのを見て、そういう出会いがあるといいなと思った。
かつて自分のシッターさんがお母さんの口紅をこっそり使っているのを見て、「絶対にシッターは雇わない」と幼いながらに心に決めた人もいるし、逆に、幼少期に母親のような優しくてたくさん遊んでくれるシッターさんに育ててもらった、という人もいる。
忙しい現代社会でもシッターを頼らない人は、そういったトラブルを気にしている場合が多い。信頼できる人に出会えるかどうか、それに尽きると思う。
⑥ ミールキット・宅配弁当|「何も考えなくていい」が最大の価値
産後のしんどさの一つが、「ご飯どうしよう」という毎日の問いだ。
産後でなくても、ご飯作りはとてもしんどい。…よく言えば、非常にやりがいのある家事でもあるが。
ミールキットは、何も考えなくていいのが本当にありがたい。材料が揃っているから、それだけで完成する。心と冷蔵庫に余裕がある日はキノコや野菜を足してランクアップもできる。その日の自分の状態に合わせて使える柔軟さがいい。
お弁当タイプの宅配は、少し取り分けてあなたと一緒に食べることもできる。手軽に品数が増えて、食材の種類も自然と増える。それだけで、「ちゃんとしたご飯」になる。
今は忙しいから大人は食べられるものを食べよう、がわたしの考えだ。食へのこだわりや盛り付けは、あなたたちがもう少し大きくなってからでいい。今は、食卓に何かあれば十分だ。
よくお洒落な食卓を披露しているママさんのSNSを目にするが、いつかこんな感じにしようかな♪くらいの軽い気持ちで流して見ている。
⑦ ママ友・先輩ママ|「どうやってる?」と聞く勇気
地域の子育て支援センターやコミュニティは、時間が合わなかったり、そこでの人間関係に気を遣う余力がなかったりで、わたしは利用しなかった。
その代わりに、上の子のママ友に積極的に聞くようになった。「大変じゃないですか?どうやっていますか?」と。兄弟がいる家庭のリアルな話は、本やネットより何倍も参考になった。聞くことで自然と交流も深まったし、孤独感も和らいだ (2)。
「聞く」は、立派な頼り方だ。
実家・パートナーへの頼り方にも、戦略がいる
サポートの話をしていて、一番身近な存在である実家とパートナーについても触れておきたい。
実家を頼ることで、かえって親との関係が悪化してしまうケースもある。ワンオペのストレスと、親との関係ストレスを天秤にかけて、消耗している方も少なくない。
わたしも、実家では「なんでも頼れる」わけではなかった。頼みたいことと、頼めることは違う。
だから今は、月に一回程度、上の子の学校行事の時だけ下の子を実家に預けにいく。自宅に来てもらうのではなく、実家に連れていく。母の負担が少しでも軽くなるように、という小さな工夫だ。頻度・内容・頼み方、全部が関係してくる。
時間も、味方になる
最後に正直に言っておきたい。
産後のホルモンが不安定な時期は、時間が解決してくれる部分もある (3)。
あの頃のしんどさが、気づいたら少し薄れていた。そういうことが、実際にあった。だから、今がしんどくても、ずっとこのままではない。それだけは、伝えておきたい。
いつかこの辛さが薄れる時が来る、それは上の子を育てているからこそ実感したことでもある。
下の子の泣き声で自分の気持ちがいっぱいいっぱいになってしまったときこそ、
「無事に妊娠を継続できて、そして生まれてきてくれて、今日まで生きてくれている」
「それにはママであるわたしの努力は絶対に必要だった、頑張れているんだ」
と、思い出すようにしている。
ただし、「時間が解決してくれる」は、「一人で耐えていい」とは違う。時間が解決してくれるはずと待ち続けることが、回復を遅らせることもある。
しんどさが続くなら、サポートが必要なサインだ。
AIは検索には使える。でも、心が弱っている時は人を頼ってほしい
最後に、一つだけ伝えておきたいことがある。
何かを調べる時、AIを使うのは悪くない。「ファミサポって何?」「産後ヘルパーの費用は?」といった情報収集には便利だ。
でも、心が弱っている時の相談相手としては、AIより人を優先してほしい。
AIは寄り添う言葉を返してくれる。でも、脳が疲れ、心が弱っている時ほど、その言葉にのみ込まれやすくなる。気づけば必要以上に不安を煽られていた、ということが起きうる。
わからないことを調べるにはAIを使っていい。でも、しんどさを打ち明ける相手は、この記事で紹介した7つのサポートの中にいる人たちにしてほしい。ママ友でも、産後ヘルパーでも、かかりつけの先生でも。生身の人間の言葉を、優先してほしい。
あなたへ
使えるサポートを全部使わなくていい。
でも、知っておいてほしい。「いざとなれば、これがある」という選択肢が、気持ちをずいぶん軽くしてくれるから。
どうか、一人で全部抱えようとしないでほしい。
もしこの記事を読んで「わたしのことだ」と思ったら、まず一つだけでも、使える選択肢について調べてみてほしい。その一歩が、しんどい日々を変えてくれるかもしれない。
この手紙はあなたに向けて書いている。いつか親になった時に、ぜひ役立ててほしい。
その時その時で、使えるサービスは変わったり増えたりするから、役所を中心に、いろんな方から情報をもらってね(各制度の詳細・お住まいの地域での利用方法は、市区町村窓口またはこども家庭庁の公式サイトにてご確認ください)。
参謀医Reimyより
参考文献
(1) こども家庭庁「産前・産後サポート事業ガイドライン・産後ケア事業ガイドライン」令和6年10月改定. https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken
(2) Cho H, Lee K, Choi E, et al. “Association between social support and postpartum depression.” Scientific Reports (Nature Portfolio), 2022; 12:3128. doi: 10.1038/s41598-022-07248-7
(3) Fuhr DC, et al. “Predictors of spontaneous remission and recovery among women with untreated perinatal depression.” Global Mental Health, 2023; 10:e34. doi: 10.1017/gmh.2023.26
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